学校は「使い方調査」でさらに育つ

全国高等学校長協会 萩原会長 × 類設計室

学校は「使い方調査」でさらに育つ

建物は、建ててからがスタートです。多くの教育施設を手がける中で、脱つくりっぱなしプロジェクトとして始動した「学校使い方調査」。※下図参照
竣工後6年経った東京都立昭和高等学校の調査結果を、当時の校長先生である萩原聡先生と振り返りながら、本調査の意義と効果について伺いました。またその先に見えてきた「これからの学び」のあり方とは。

Special Talk|全国高等学校長協会 萩原会長× 類設計室

学校は建ててからがはじまり

――新校舎を使い始めて、6年。都立昭和高等学校の「学校使い方調査」の結果をご覧になられていかがでしたか?

萩原 多くの公立校は数年で校長が入れ替わる背景もあり、現場の教員たちではなく教育委員会の意向で校舎がつくられます。そのため校舎を建て終えたら、設計事務所さんとの関わりは終わってしまう。我々はただ校舎を使うだけ……となりがち。「学校使い方調査」によって、設計当初考えていた設計コンセプトと運用後の実態を照らし合わせることは大きな意味があると思います。教育委員会としても、次の設計に活かせますしね。
新川 設計は使う人の意見を聞きながら進めます。常々、竣工後の様子は気になっていましたが、私たちとしても「学校使い方調査」を通してたくさんの発見がありました。設計者と運営者がお互いにフィードバックできる接点をもつことで、おっしゃる通り、他校の建設にも活かせます。これは全ての竣工物件で実施した方が良いと思いますね。現場の先生方がいろいろと試行錯誤しながら使っていただいていることも知れて良かったです。

柴田 実際に校舎を使っている先生方とお話ししてみて「よりよく使っていきたい」という思いを感じました。建物のポテンシャルを最大限に教育現場に活かすためにはどうしたらいいか?と先生たちも考えてくださっている。一方で壁になりやすいのが、数年で先生が入れ替わってしまうこと。どういう意図で建てられたのか、想いが受け継がれていきません。今回のように竣工後、時間が経ってから使い方調査をして、その調査結果を報告会という形で使い方の実態と設計当時の想いを伝え、みなさんと共有することで、先生方の意識にも変化があったと思います。

――竣工後、使い始めの頃に特に工夫していたことはありましたか。

萩原 設計段階には絡んでいませんが、当時の監理の方からコンセプトを丁寧にお話していただきました。そしてそのコンセプトを最大限活かすため、家具の配置や使い方を考えていきました。たとえば、中央にある「白馬ラウンジ」には、画一的な四角い机ではなく、勾玉型のような机が似合うと思いました。特に、全生徒から見える共有スペースの使い方には頭を使いましたね。
柴田 やはり使い方調査の大きな意義として「設計コンセプトの貫通」があると感じます。ただのフィードバックの場ではなく、「継承の場」であって「発展の場」でもあるということ。なぜその空間をつくったのかという設計意図を、生徒や先生方に伝えることは大切ですね。
新川 コンセプトをより花開かせていくための調査は、これまでありませんでしたから。竣工後に実施する「瑕疵検査(かしけんさ)」とは全然違う。運用者も設計者も、お互いに多くの気づきがある、未来に繋がる活動になると思います。

萩原 あと、場所の命名も大切ですね。中央のラウンジは、当初「生徒ラウンジ」という名前でした。でも生徒たちがこの名前で集まるとは思えない(笑)。じつは昭和高校は、毎年長野県の白馬で移動教室を行なっていて、そこの寮を売った財源で家具を購入したんです。それで「白馬ラウンジ」に。学生にとっても馴染みのある名前になりました。
柴田 場所の呼び方は、私たちも議論していました。教室や講義室と呼んだ途端に、使い方が強制的に決まってしまう。そうすると、生徒も先生も使いたくなくなっていく。いかに内発的な活動を引き出す名前にするか。「勉強しなさい」と言われたら勉強したくなくなるのと同じですね(笑)。

萩原 聡

全国高等学校長協会 会長
東京都立西高等学校 統括校長
(東京都立昭和高等学校 前校長)

都教育庁指導主事を経て、2012 ~2016年、都立昭和高校の校長として「二兎を追い、二兎を得る。」を具現化する新校舎運用を先導。2019年より現職。

新川啓一

株式会社 類設計室
ディレクター

都立昭和高等学校の設計統括を担当。数多くの教育・研究施設の設計統括を担い、竣工後も施設の使い方調査を含め、一貫して生涯パートナーとして関わる。

柴田英明

株式会社 類設計室
計画設計部

都立昭和高等学校の学校使い方調査統括を担当。数多くの学校使い方調査を担うことで、学びのあり方を生々しく追求し、提案につなげている。

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