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主体的な学びを活性化する
新しい空間開発

追手門学院中・高等学校

新時代の学び舎を求めて

学校法人と設計事務所が一体となって推進した、追手門学院中・高等学校の新校舎プロジェクト。
2019年に完成した新校舎では、これまでにない学び、そして学び場づくりを実践されています。
今回の対談では、本プロジェクトが生み出した成果や現状を追うとともに、大きく変化するこれからの時代にどのような学びを創っていくべきか、追手門学院中・高等学校の先生方と議論してみました。

「どんな人間に育ってほしいか?」
その問いこそが、プロジェクトの原点。

はじまりは、2030年の未来予測と
学校教育への疑問から。

――総持寺キャンパスへ移転するにあたり、追手門中高さんとは多くの議論をしてきましたが、振り返ってみてどうでしたか。
木内 現場のことを知らない業者の方が設計をして、ただ学校の上層部から「建てたからこの校舎を使ってね」ということは避けたい、と思っていました。類さんとともにつくりあげた当校舎には、経営層はもちろん、現場の先生方の考えもしっかり反映されています。

辻本 どんな新校舎にするかを考えるにあたり、議論の起点となったのは「2030年ってどんな社会?」という問い。新校舎が建ってから、そこで生徒が学び、社会へ飛び立つまでを考えると、10年後の社会情勢まで見据える必要がありました。ただ、先生たちとさまざまな可能性を話し合いましたが、未来のことは誰も正確に予測できない……。結局は2030年を迎える頃、生徒たちが「どんな人に育っていてほしいか」との議論に至りました。どんな社会になろうと、持っていてほしい力とは何か。どうすればその力が身につくか。これらの視点を軸に、学び場のあり方を考えました。

そして、もうひとつ。社会に出るための学び場である学校教育が、「受験のため、偏差値のための教育」に終始し、いつまでも変わらないのはおかしい、とモヤモヤしていたんです。だから新校舎では「学びの中身から変えよう。カテゴリーも校舎も、今までの学校から変えよう」と、類さんとともに教育の歴史や文献調査、先端的な教育の事例調査や視察を重ねて、新教育の実現を目指しました。そうして生まれたのが、3つの教育コンセプト。①基礎的な知識・技能を習得するための「個別型学習」、②教え合い・学び合いの場で知識を応用していく「協働型学習」、③教科の枠を超えた実践的プログラムの「プロジェクト型学習」です。校舎と教育の内容が分断されることなく、教育コンセプトから設計コンセプトを導き出し、相互に行き来しながら検討を重ねられたことは本当に良かったと感じています。

喜田 先生方と設計事務所が、ここまでいっしょになって設計を進めた事例はほとんどないはず。今回実現できた基盤には、先生方が今の教育に対して危機感を肌で感じていたからではないでしょうか。今思うと、以前、安威キャンパスの中高校舎を設計させていただいた時から、先生方の意識変革が始まっていたように思います。
辻本 安威キャンパスの時にもさまざまな挑戦をしましたが、先生たちの意識を変えるにはまだ時間が必要でした。総持寺キャンパスではこれまでにない校舎をつくることで、先生たちの意識変革をもっと加速させたいなと。しかし急に新教育に振り切った校舎にすると使いこなせなくなる懸念もあり、過渡期として新しい挑戦をしつつも、従来通りの使い方もできる校舎にしました。ただ、新校舎を建てて「新しい教育をします!」と表明したことで、池谷先生をはじめ、学内外から賛同者が集まってくれたことは大きな変化でしたね。

木内淳詞

追手門学院中・高等学校学校長

1987年に追手門学院中・高等学校に赴任。2008年に教頭に就任し、2012年に追手門学院大手前中・高等学校へ異動、教頭2年、校長4年を務めた後、2018年より追手門学院中・高等学校の校長を務め、現在に至る。

辻本義広

追手門学院中・高等学校教頭

2020年、教頭に就任。新校舎の設計にも携わり、校舎すべてが学びの場になるように、次世代の「新校舎」「新教育」を目指している。

池谷陽平

追手門学院中・高等学校
探究科主任 / 探究デザイナー

大阪府立箕面高等学校に8年間勤務。現在、追手門学院中 ・高等学校3年目。今年度より開設した「探究科」主任。探究メディア『O-DRIVE』責任編集者。

喜田育樹

株式会社 類設計室 
ディレクター

本プロジェクトの設計統括を担当。安威キャンパスの校舎から、この新校舎、そして施設の使い方まで、一貫して生涯パートナーとして関わる。

網野琢馬

株式会社 類設計室 
計画設計部

基本構想段階からデザインとプランの検討を担当。お客様とともにこれまでにない学校をつくるため、学びの中身から校舎のあり方を追求した。