2017年1月12日

雑誌「スクールアメニティ」に亀岡川東学園が掲載

スクールアメニティ2017年1月号に弊社が設計した亀岡川東学園が掲載されました。

改正学校教育法の成立により、日本の小・中学校は一貫校に移行していく動きが高まっています。ただ、その中身は、少子化による学校の統廃合といった施設や体制面からの課題が先行しがちです。

しかし、小中一貫校の意義や可能性はそれだけではありません。

類設計室では、これからの教育や小中一貫校に求められる新たな機能や役割を追求し、児童・生徒はもちろん地域を活性化する拠点としての施設づくりが必要になると考えました。

亀岡には、地域ぐるみで子供たちの学びを支える、本来の教育の基盤となる地域共同体が整っています。

子供たちを学校だけの世界に留めるのではなく、新しい学び舎を、人々の生活に溶け込む地域活動の場となるにしたいと考えました。
子供たちが日々、地域生活や地場産業の課題に取り組む大人の姿を当たり前のように目にし、学びを得る―。学年や年代を超えた絆が、子供たちの郷土への愛着を育て、次代の地域の担い手に育っていくことを想い描いています。

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地域が日常的に集う・活動の場

地域ぐるみの教育ゾーンを学校の中心に据えることで、地域の人々が日常的に集い、児童生徒と交流できる施設とした。正門と建物の間に確保したゆとりあるアプローチ空間を「ふれあい広場」と名付け、面する棟には地域図書室、放課後児童会、特別教室などの地域活動諸室を配置。さらに、これらと校務センターとの間には、学校のエントランスにもなる「ふれあいテラス」を設け、登下校時や地域イベントで児童生徒や教職員と住民の間に交流が生まれる仕掛けを施している。

地域住民1人ひとりが先生

地域住民が、職能や特技を活かしたボランティアティーチャーとして活躍し、子どもの学びを支える環境を考えた。

管理・特別教室棟は地域活動諸室のほか、北側を管理諸室とし、2階に特別教室を配置。地域住民が参加する授業展開の可能性を高めた。また地域活動諸室を学校運営時間外でも地域利用ができる区画とすることや大人数が利用できる講堂を近接して配すことで、地域行事での利用が行いやすいつくりとしている。

異年齢の子どもが多様な交流の中で絆を深める

施設の中央には多目的教室とランチスペース、図書室を一体化した全校児童生徒が集まることのできる「絆空間」を設置。1年生~9年生までの異学年交流拠点と位置づけた。さらに「絆空間」を取り囲むようにホームルーム棟を配置。児童生徒は各場所に「絆空間」を通ってアクセスするため、必然的に出会う機会が増え、交流が促される仕組みとした。「絆空間」は、1本の樹木をモチーフとした鉄骨パイプによる立体トラス架構で屋根を支える構造とすることで、視認性がよく開放感のある大空間を実現できた。大きな樹木の下で異学年交流が促され、絆が育まれていくコンセプトが視覚的にも伝わると考えている。

また、学年1学級であることを逆手に、全教室を同じフロアに配置することでも学年を超えた交流を促している。ホームルーム棟の屋根は木造であり、教室は木の架構が現しとなっている。通常この規模では耐火建築物とする必要があるが、RC造との混構造としてさらに建物を分割。防耐火関連の法規制をクリアした。また、床のフローリング、府内産材の羽目板、デッキテラスなど、内外ともに積極的に木質化を行い、暖かみのある落ち着いた校舎を実現できたと考えている。

風景に溶け込んだ地域のシンボルがつくる環境

玄関となる正門側の建物外観はシンボル性を高めるために屋根を頂いた門構えとし、正門側は2つの越屋根を対照的に配してアプローチの桜並木と合わせて地域の人々を自然に導くことを狙っている。建物全体としては、勾配屋根の連なりで構成。亀岡盆地から臨む、大らかな山並みと地域の家並みに調和させ、大人たちにとってもふるさとの心象風景になる佇まいを意図した。

勾配屋根で形成される三角形のハイサイドライトは教室の奥まで自然光を行き届かせ、明るい教室環境を実現。またハイサイドを開放することで重力換気による自然通風を促進し、空調がなくとも快適な期間を長くできている。結果としてCASBEE(建築環境総合性能評価システム)でも最高ランクの「S」を取得している。

生まれ育った郷土の自然に親しめる豊かな屋外環境

全教室が1階にあることを活かし、各ホームルームの外側には屋外学習のウッドテラス、南側には10 分休憩でも運動できるミニグラウンドを設け、南丹の緑濃い山並みに抱かれた立地を活かした屋外空間としている。北側グラウンドは、合同体育祭などの大人数行事、クラブ活動、お祭りなど多彩な催しができる広さを確保。臨時の駐車も可能とし、地域の方々が集う拠点として計画している。

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