外装ディテールを
標準化し、技術伝承
建築知識2023年10月掲載
設計技術編

技術蓄積を「建築知識 外装おさまり特集」に掲載
建物の外装材の選び方や納まり検討は、経験が必要な難所のひとつであると言われており、デザイン性・機能性・雨水侵入防止などの様々な要求性能を統合した設計が求められます。
類設計室では、意匠設計部が中心となって外装ディテールの基準化に取り組み、技術を伝承してきました。また、株式会社エクスナレッジ様の「建築知識2023年10月号 外装おさまり特集」にて、建設業界を担う設計者や学生の皆様に少しでも役立てていただくことができればとの想いから、紙面の一部に掲載させていただきました。
類設計室にて、
1. 仕上げに木材を使用した準耐火構造の外壁
2. RC造の外壁タイル割付の勘所
3. 金属断熱サンドイッチパネルの基本納まり
4. コストを抑えてスッキリ見せるALC外壁
5. パネルの使い分けでファサードに変化を付けたECP外壁
の5つのディテール解説を作成いたしました。
仕上げに木材を使用した準耐火構造の外壁
木造の外壁には、デザイン面だけでなく、防火性能や耐久性、コストなどを総合的に考慮して決定する必要があります。近年の法改正をいち早く取り入れた東京都・幼稚園(耐火構造)と神奈川県・小学校(準耐火構造)の実績を元に、耐火・準耐火構造の木造について紹介しました。
これまで鉄筋コンクリート造など“燃えない建材”でしか建てられなかった建築を、それと同等の防耐火性能をもった“木造”で建てる。言うのは簡単ですが、法令の基準は難解です。しかし、実大火災実験などで得られた知見、すなわち防耐火の考え方が分かれば、難解な法令も読み解くことができ、設計で失敗することはありません。このような基礎と応用の考えをディテールをもとに紹介しています。
RC造の外壁タイル割付の勘所
タイルは、目地の合わせ等の割り付けや、タイルのサイズに合わせた建物のスパン決め等、設計の早期段階から検討する必要があります。大阪市内の大学校舎を設計した際、外観に相応しい「素材感と品格」のあるデザインとするため、外壁にタイルを採用しました。さらに、高層建物の伸びやかさを際立たせるために、建物中央に位置する列柱にもタイルを施しています。
外壁や列柱などの幅・高さが異なる中で、統合感ある表情を作り出すことが大きな課題でした。そこで、タイルを余りなく綺麗に割り付けてコンクリート躯体に増打を施すとともに、目地幅もmm単位で設定しました。また、柱のコーナー部も同様に、躯体の増打寸法を設定することで、コーナー用の役物タイルを綺麗に割り付けできるようにしました。
金属断熱サンドイッチパネルの基本納まり
金属外装材は、性能、施工、デザインの点でメリットが多くあります。一方で、耐熱性や防錆性等にも注意が必要です。先端技術を扱っている企業の新オフィスを設計するにあたり、無駄のない端正なデザインが求められ、10年以上にわたって事業拠点を整備してきた建物群の景観を統一する外壁として、金属サンドイッチパネルを採用しました。
端正なデザインを際立たせるため、パネル同士のジョイント、コーナー部の納まりは、素材の熱膨張をふまえつつも目地寸法を最小限に設定。また、開口部まわりや基礎の立ち上がりとの取り合い等、異種材料との取り合いは、同面で納めるための工夫を施しました。加えて、長期的に金属サンドイッチパネルの美観を保つために、開口部や巾木の水切りは、毛細管現象によって水がシーリングと水切りの隙間を上がってくることなく、水が切れるように寸法を設定しました。
コストを抑えてスッキリ見せるALC外壁
ALC板は、ローコストが求められる工場や商業施設で定番の外壁材料です。見た目が美しい材料とは言えませんが、開口やパネルなどの割り付けルールを統一することにより秩序立ったファーサードデザインにする事ができます。
躯体とパネルのクリアランスをどうするかは上部鉄骨との施工クリアランスで決まると考えがちですが、実際はRC腰壁の縦配筋と鉄骨柱のベースプレート収まりがクリティカルになるケースが多くあります。また、礎柱と地中梁の面を合わせて土中型枠をまっすぐ通せるようにしてコスト縮減と施工手間を省く事が可能です。類設計室では、これらの考え方を整理し、社内の標準ディテールとして整備しています。RC腰壁とパネルをツライチとすることでスッキリした意匠にできますが、RCの施工精度が要求されるため、境界部に水切りを入れて精度の逃げを打つ方法もあります。
パネルの組み合わせで変化あるECP外観
ECPは、素地仕上げで使用ができるため、素材感を生かした外観をつくることができます。類設計室では、京都市上下水道局本庁舎の外壁にECPを採用しました。京都市上下水道局本庁舎の設計では、平時においても快適な執務環境を提供するため、開口部に自然換気システムを導入するなど環境面にも配慮した計画としています。
建物の外観は、市民の基幹インフラ設備を担う庁舎としての安定感を表現すべく、自然換気装置を組み込んだ横連窓を外壁より少し後退させて設置しています。さらに、外壁の横張りの押出成形セメント板には、押出成形セメント板特有のエッジの効いたリブ付きパネルとフラットパネルを採用する事で、陰影のメリハリが感じられる横基調の安定感のあるデザインにできました。
技術を伝承し、次世代の設計者を育成していく
類設計室では、社内にとどまらず多くの設計者により良い建築を設計していただくこと、また、次世代の設計者を育成していくために、引き続き、技術追求と社会発信に取り組んでまいります。
また、社内での設計者の人材育成にも力を入れ、技術の伝承を図っていくことで、クライアントや利用者の皆様に品質の高い建築設計を提供してまいります。

◆ 発行元
建築知識「建築知識 2023年10月号」
◆ 発行日
9月20日 全国の書店にて発売中