はじまり

次世代の担い手育成のための特別授業

「生徒の選択肢を広げたい」
先生方の想いから企画スタート

2015年に竣工した京都工学院高校さまのプロジェクトラボ(クリエイトCUBE)の設計・校舎全体の美装を類設計室が担当しました。そのご縁から、今回の特別授業を依頼いただきました。

依頼いただいた背景には「設計志望の生徒に“本物の仕事”を体感させ、将来の選択肢を豊かにしたい」という先生方の想いがあり、「是非協力させてほしい」と企画がスタートしました。

そこで、類設計室は人材の担い手不足が懸念される建設業界の「次世代の担い手育成」を目的として、生徒とも比較的年齢が近く、社内で活躍する中堅世代(6年目~10年目社員:20代後半~30代前半)でプロジェクトチームを立ち上げ、先生方との協働企画が始まりました。

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授業テーマ

追体験を通じて社会・施主同化の大切さを伝える

”本物に触れる”ことが生徒の活力を引き出す

先生に提案した授業テーマは、本物の仕事を体感してほしいという想いから「実際の設計プロジェクトを題材に、我々が実際にぶつかった課題をどのように解決したか、その設計プロセスを追体験していく」というテーマです。先生方に提案した瞬間、「是非そのテーマでお願いします!」と言っていただき、すぐに中身を具体化し始めました。

題材にしたプロジェクトは酉島製作所さまです。

酉島製作所の外観と内観の吹き抜け

今回の授業を通して生徒に一番伝えたかったのが「社会・施主同化」の大切さです。建築設計は技術領域が広く深いため、「技術」そのものの習得に焦点があたりがちですが、大事なのはその手前にある施主の想いや社会状況への深い理解です。この同化過程を経て抽出した期待や課題に対し、「どのような技術で解決するか、どのようなデザインをするか」といった思考プロセスが重要です。

この思考プロセスを追体験できるように、設計プロセスを4つのフェーズ(①営業~計画、②意匠、③構造、④設備)に分け、計4回の授業で1つずつ追体験していくプログラムを組み立てました。

当日は教育事業部で探究カリキュラムを担当する講師もグループ追求に参加し、生徒の意見の引き出し方、追求の進め方などの知見を活かして授業を行いました。

 

〇対象
プロジェクト工学科 建築デザイン領域 3年生 30名

 

〇プログラム

第一回 9/13(水)13:20~14:10 営業~計画編
          14:20~15:10 意匠編

第二回 9/20(水)13:20~14:10 構造編
          14:20~15:10 設備編

第一回目の授業は、「営業~計画編」+「意匠編」を実施しました。

はじめに、酉島製作所のプロジェクトが始まった経緯とプロジェクトにかける想いを紹介。その想いを実現するために、我々が実際に行った「デザイン追求」の過程をグループワーク形式で追体験してもらいました。

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第一回 授業:9/13

社員の一体感を高めるオフィス空間のデザイン追求

営業~計画編

「一体感を高める」オフィスデザインとは?先端事例から分析してみよう!

酉島さまが今回のプロジェクトでメインテーマに掲げたのが「社員の一体感を生み出す」こと。「一体感を高めるオフィス空間をどう実現するか」が追求課題でした。グループワークでは、実際に我々が行った「先端事例の分析⇒一体感の言葉化」を実施しました。

オフィスの先端事例を分析し、一体感を言葉化している様子
一体感についてプレゼンする生徒

意匠編

「水」をテーマにエントランスデザインを提案してみよう!

意匠編では、ポンプを扱う酉島さまにちなんだ「”水”をテーマにしたエントランスデザイン」の追求を実施してもらいました。

はじめに「水」から連想するイメージを言葉化(透明・青・波紋・ゆるやかな曲線 etc)。次に、キーワードを検索して空間事例を探索。選んだ空間事例が「なぜ水なのか?」「どう良いのか?」を言葉化。実際にお施主さまにプレゼンするイメージで追求しました!

水をテーマに、社員と一緒に空間事例を探索中
選んだ空間事例についてプレゼンする生徒
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第二回授業:9/20

デザインを実現するための配置・環境計画の追求

第二回では、「構造編」+「設備編」を実施しました。

生徒にとっては、授業でも扱ったことのない領域へのチャレンジでした。企画段階では「生徒の手が動くか心配だな…」という先生の声もありましたが、心配はなんのその。専門知識の有無にかかわらず、イキイキとグループワークに臨み、構造設計・設備設計に取り組んでいました。

構造編

ブレースの配置計画を考えよう!/構造種別を計画しよう!

構造編では、実際の構造計画をグループワークで実施しました。建物全体のバランスを考えたブレースの配置する、建物の用途・条件を考慮した構造種別の提案等、超実践的な内容です。基礎知識がない中で手が動くか懸念もありましたが、杞憂に終わりました。期待をはるかに超え、生徒はイキイキとした追求姿勢で、非常に盛り上がりました!

ブレース配置を検討する生徒
社員も含めてグループで追求中

設備編

吹き抜け空間の環境計画をしてみよう!

設備編も超実践的。酉島製作所のメイン空間である「ワンルームオフィスの中心となる吹き抜け」の環境計画を実施しました。はじめに、温熱環境の解析結果をもとに、吹き抜け空間の熱環境の課題を抽出。続いて、その課題を解決する手段を提案しました。初めて取り組む分野でしたが、食らいついて追求してくれました!

解析結果をもとに課題を抽出する生徒
対策案についてプレゼンする生徒
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わたしたちの気づき

本物に触れることで、活力が引き出される

2回にわたる授業を通じて感じたことは、「本物に触れる」ことが生徒の活力を引き出すことです。特に、検討過程の手書きスケッチなどを紹介した際の生徒の食い付きが非常に印象的でした。何が書いてあるのかは分からないはずですが、生徒の探求心は爆発!

 

「これ前授業でも習ったところだ。こうやって書くのか~」
「うわ~こんなに書くのか~。すごい…」
「このスケッチすごいな。もっと手書きしないとな~」

手書きスケッチについて質問する生徒
手書きスケッチについて熱弁する社員

生徒は”本物”を求めている

我々が普段取り組んでいるありのままをぶつけるだけで、こんなにも生徒のやる気・活力が引き上がることは、我々自身にとっても活力になりました。

特別授業の目的として、「次世代の担い手育成」を掲げていたように、今回の授業を通じて、一人でも多くの生徒が設計者を志すきっかけになれば嬉しいです。

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設計者

  • 高橋 謙太
    たかはし けんた
    大阪設計室 企画部

    1991年新潟県生まれ。2014年日本大学生産工学部建築工学科卒業。2016年日本大学大学院生産工学研究科建築工学専攻修了後、類設計室入社。

  • 松井 敬二郎
    まつい けいじろう
    大阪設計室 計画設計部

    1990年奈良県生まれ。2013年神戸大学工学部建築学科卒業。2015年神戸大学大学院工学研究科建築学専攻修了後、類設計室入社。

  • 出田 麻子
    いでた あさこ
    大阪設計室 計画設計部

    1992年京都府生まれ。2015年信州大学工学部建築学科卒業。2017年信州大学大学院工学研究科建築学専攻修了後、類設計室入社。

  • 松本 翔
    まつもと しょう
    大阪設計室 構造設計部

    1989年埼玉県生まれ。2012年早稲田大学創造理工学部建築学科卒業。2014年早稲田大学大学院創造理工学研究科建築学専攻修了後、類設計室入社。

  • 小西 瑞希
    こにし みずき
    大阪設計室 設備設計部

    1995年滋賀県生まれ。2018年近畿大学建築学部建築学科卒業、同年類設計室入社。