本源的な建築を追求し続ける

トップデザイナー

KENJISATO

佐藤賢志

建築学科出身

設計事業部

1987年入社 / 計画設計部 部長

– 主な業務経歴 –

東京設計室のトップデザイナーとして、ほとんどのプロジェクトに関わり、デザインを洗練させている佐藤さんの魅力をご紹介します。

―これまでさまざまな大型プロジェクトを手掛けてこられた中で、印象に残る仕事やエピソードをお聞かせください。

一人の力では限界がある。多くの叡智を集めて提案を練り上げる

手掛けた建物は全部自分の子どものように思い入れがあります。その中でも最近のプロジェクトで印象に残っているのは、「本の森ちゅうおう」や、「味の素株式会社クライアント・イノベーション・センター」、「尾久図書館」など。想いが実現した、カタチになった、と思えるプロジェクトですね。

例えば、中央区の「本の森ちゅうおう」という図書館のプロポーザルは世界でも名だたる建築事務所が競合でした。その分、社内の期待も高く、より気合が入ったのを覚えています。
そのような期待に応えるためにはひとりの力だけでは限界があるので、なるべく広く多くの叡智を集めて提案を練り上げる事を意識しました。普段は主にチーム内でデザインを揉みますが、この時は社内ネットに途中スケッチを頻繁に公開して社内全体に向けてアイディアを募りました。それを見た東京設計室のメンバーはもちろん、大阪設計室のメンバーからもアイディアスケッチが投稿されたり、電話をくれたり、とにかく設計室全体の熱量が高まった瞬間でした。そのアイディアをもとに東京の計画設計部メンバーを巻き込んで、みんなで手を動かして何度もスケッチを塗り重ねました。クライアント・設計室のみんなの想いに同化し、身体を使って塗り重ねることで、潜在的にも良い!と思えるカタチに辿り着いた感覚があります。結果、プロポーザルに勝利することができ、プロポーザル時からの想いを設計から現場まで貫徹させた図書館が無事開館しました。

ひとりでデザインを考えるのではなく、みんなの頭を借りてアイディアを募り、最後は自分が統合しきる、と腹をくくったからこそ勝てたのだと思います。

―類設計室の強みを教えてください。

どんなプロジェクトでも、社会を良くするために「本源的な建築をどう実現するか」を考えている。

一体追求は類設計室の強みのひとつですが、私も初めから出来ていた訳ではありません。一人でやりきらなければ、今までにない奇抜なものをつくってやろう、と意気込んでいた時期もありました。しかしそれではただ消費されるだけのつまらない建物になってしまいます。建物を建てるという行為の奥にあるクライアントの期待や、その先の社会の期待を構造的に捉える。物事の根本を突き詰め、社会を良くするために本源的な建築を追求する。そんな志が今では全社に貫徹しており、その地平でみんなの期待の結晶物として建物を設計できることがとても面白いです。
ある時には、全社員で追求成果を上げるために生命原理を遡って脳の構造を追求したり…その共通の認識があるから、デザインへのアプローチの仕方も、試行錯誤しながらも一体となって追求できているのだと思います。

また、事業間の連携で生まれる可能性の広がりに、ワクワクしています。教育事業部で培った子どもたちの「本物の思考回路」を形成する指導実績や塾経営のノウハウを教育施設の設計で提案しているからこそ、教育・研究施設設計トップの実績を積み重ねられています。また、農園事業部との共創で、離島振興協会のプロジェクトを設計の枠を超えて追求できています。
それぞれの事業部が培ってきたつながりを通して、プロジェクトが舞い込んできたりと、社内外の関係性が融合してきて、単なる建築の枠を超えた追求には無限の可能性があると感じています。

―人材育成をする時に意識していることはなんですか?

一緒に思い切って仕事をしたい。そのために、やる気や潜在的な力を引き出す。

これからの未来社会をつくっていく、その中心になっていくのは若手です。一緒に思い切って仕事をしたいと常々思っています。なので、社員と接している時は、その人のやる気を上げたい。潜在的な力を引き出し、伸ばしてあげたい。と思って接しています。
そのためには、私自身が先導しながら鼓舞した方が良いのか?短期間ですり合わせ、引き出しながら共に追求していくやり方が良いのか?その都度その人の特性を注視して試行錯誤しています。それをやり続けることで、対等な関係で一緒に追求できると感じています。

最近では、部署関係なく有志の若手を集めた「佐けん塾」を開催しています。設計では、クライアントの想いを引き出し、想いと展望を共有する力がカギになります。その時に手書きスケッチが強力な武器になるのは間違いないので、設計の根幹にある軸を示しながら、同時に全身を使って一緒にスケッチするなど、人材育成を工夫しながら楽しく行っています。

―就職活動中の学生へメッセージをお願いします。

手を動かして、身体を動かして、全身全霊で捉えること。
そして、身体を使ってアウトプットして欲しい。

学校の課題でも、社会に出てからの設計の場面でも、今ではパソコン上で何でもできてしまう時代です。速いし、とても便利ですよね。でも、それだけだと表面的な形しかできない。作ってる本人も良い悪いを判断できないのが難点です。
建物は頭の中でできるものではなく、現実の場に存在してみんなが使う場だから、設計をするためには、身体感覚が必須になります。手を動かして、身体を使って捉えたイメージを書く、それを繰り返していけば塗り重ねるスピードも上がるし、デザイン思考、つまりデザインの成り立ちに同化できる力が身に付きます。
学生のうちから、全身全霊で捉えて、それを身体を使ってアウトプットする感覚を養って欲しいですね。その力は必ず現実の設計場面でも生きてきます。

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