その図面の先に、
人の営みが見えるか。

Nayuta Itou

夷藤 那由太

2023年入社 / 意匠設計部

幼少期から遊ぶ道具を手作りし、ものづくりの魅力に目覚める。大学では建築とデザインを学び、2023年に類設計室へ入社。1年目から600平米の幼稚園設計をメインで担当し、他部門との連携や統合役を担う。現在は意匠設計として、幅広い施設の設計に携わる。

建築を通して、活力ある社会をつくる。

子どもの頃、リノベーション番組が好きで、よくTVにかじりついて観ていました。建築そのものよりも住まい手の感動する姿に惹かれていたのを覚えています。進学した大学では、建築を軸にしながらも、空間デザインや造形、Webやプログラミングなども扱う幅広い学びがありました。その中でもやはり空間設計の奥深さに惹かれ、就職活動では建築一本に絞りました。組織設計事務所、アトリエ、ゼネコン…様々な選択肢があるなかで、中大規模の建築に携われる組織設計事務所を志望。住まい手と設計者の一対一の関係ではなく、より多くの人々の営みに関わる建築をつくりたい。そんな想いがあったんです。その中でも類設計室を選んだ一番の決め手は、「人」を見る面接でした。形式的な質問は一切なく、どんな幼少期を過ごしてきたのか、どんなふうに社会を見ているのかといった、自分の内面や価値観を深く掘り下げられるような問いかけが多く、まるで対話を通じてその人らしさを引き出そうとしてくれているように感じました。ここでなら、自分の人間性ごと受け入れてもらえる、そんな安心感がありました。また、ただ図面を描くだけでなく、「活力ある社会をつくる」ために、教育、農業といった様々な事業形態があること、常に社会に求められていることを問い続ける企業姿勢に共感しました。ただ設計要件に沿うだけでなく、その建築が地域や社会にどう影響し、どんな活動を育てていくかという未来の営みまでを見据えて考える文化が、類には根づいています。図面の向こう側にある、人々の暮らしや社会の変化まで見つめて設計する。そうした設計者としてのあり方に惹かれたのだと思います。

プロジェクトのすべてを見渡す「統合役」として。

入社して半年が経った頃、乳幼児施設のプロジェクトで、「統合役」を任されました。統合役とは、意匠設計としてだけでなく、構造・設備といった他部門と連携し、全体像を描きながら設計を進めていく役割です。比較的小規模な案件だったからこそチャンスをいただけたのですが、設計の「いろは」すらまだ曖昧だった私にとって非常に挑戦的な役割でした。統合役として特にやりがいを感じたのは、部門間の対話を通じて、一つの建築を創り上げていくプロセスでした。例えば、意匠側が実現したい空間と、構造側が追求する安全性を、対話を重ねることで高いレベルで両立させ、より良い答えを導き出せたときに大きな手応えを感じます。そうした場面で必要なのは、「この建築で何を実現したいのか?」というそもそもの視点に立戻り、チームみんなで同じ方向を向いて塗り重ねていくこと。その繰り返しの中で、意匠設計者から建築全体を考える設計者へと視野が広がったように思います。また、各部と密に会話しながら、次のアクションを先読みして動いていくことでプロジェクト全体を設計する力も身についていきました。

想像の解像度が、設計の質を変える。

入社以降、乳幼児施設に限らず、大学や生産施設など、用途も規模も異なる様々な建築設計に携わってきました。常に大切にしてきたのは、「活動を起点に考える」という設計姿勢です。誰が、どこで、どんなふうに過ごすのか。そこにどんな動きや感情が生まれるのか。そうした営みを具体的に想像する解像度こそが、設計の質を決めると感じています。先述の乳幼児施設のプロジェクトでは、まさにそのことを痛感する出来事がありました。園庭に築山を計画していたのですが、その設計が、子どもの特性や安全性が十分に考慮されていなかったことに社内レビューを通じて気がついたんです。先輩方からのアドバイスを通じて、子どもたちがどんな身体感覚で動くか、安全に登って降りられる角度とはどのくらいかなど、多様な視点を得ることができました。そこから再度、子どもたちの活動や安全性を捉え直し、その空間がより豊かになるような案を再提案できたと思います。また、走り回る子どもがガラスにぶつかって怪我をしないよう、なるべく床の高さから一定の高さまでは窓を設けず、柔らかい素材で壁を構成したり、人の営みに設計の一つひとつを接続させるよう心がけました。こうした経験を経て、より良い設計とは利用者の活動や感覚を捉え、その意図・想いを図面に落とし込むことなのだと思うようになりました。今後は、意匠設計の枠にとどまらず、構造や設備といった見えない部分にも想像をめぐらせながら、建築全体を解像度高く捉えていきたい。そうすることで、初めて期待を超える建築が実現できるのだと思っています。

Nayuta Itou

私が追求したいこと

人々の活動や営みをつくる「建築」の可能性。

人々の活動や営みをつくる建築に、どこまでの可能性があるのか。その本質をとことん追求していきたい。そのための技術力や知識はもちろん、実際に使う人々の声に耳を傾け、社会情勢や関係者との関わりなど、建築を超えた多角的な視点で世界観を広げられる設計者になりたいです。

※所属、仕事内容は取材当時のものです。