木構造の探求者として、
まだ見ぬ可能性を、
カタチにする。

Takuma Ishii

石井 卓磨

2023年入社 / 構造設計部

建築業界で働いていた兄の影響で建築に興味を持ち、大学では木質構造を専攻。修士課程中に類設計室のインターンに参加し、木材接合部の新技術に関する研究・実験に携わった。入社後は、構造設計者として、構造性能はもちろん、空間のデザイン性や施工性、意匠・設備との整合性まで見据えた設計に取り組む。木造建築の新たな可能性を切り拓くべく、日々、追求を重ねている。

「やってみたい」に応えてくれる、挑戦の土壌。

実家は佐賀の山あいにあり、周囲の住宅はほとんどが木造。祖父母の家も和風のしつらえで、木の柱や梁がそのまま見えているような造りでした。そんな環境で育ったこともあり、「建築=木造」という感覚が自然と根付いていたのかもしれません。大学・大学院では木造を専門に研究していました。そんな中、転機となったのが類設計室との出会いでした。所属研究室の先輩からお話を伺う機会があったのですが、若手のうちから技術的な提案を任されたり、挑戦できる土壌があると感じたんです。「ここでなら、もっと構造設計の本質に近づけるかもしれない」と直感しました。インターンでは実際の物件の課題に取り組みました。そのときのテーマが「重ね梁」に「斜めビス」を用いた屋根架構の検証です。お客様の与件から集成材を使えないという制約のなかで、製材を重ね、斜めにビスを打ち込むことで強度と剛性を高めるという手法に着目。2週間のインターン期間中に仮説を立て、インターン後や入社してからも「斜めビス」のせん断耐力や構造的な特性を実験・検証しました。検証結果はのちに日本建築学会で発表する論文にもつながり、実際のプロジェクトにも使われています。さらに後年、この論文は他の研究者によって引用され、より汎用的な斜めビス接合の算定式を開発する際の基礎データとして活用されました。自分の仮説と検証が、誰かの技術探求の出発点になる。そしてその技術が、未来の建築に応用されていくかもしれない。そんな体験が、若手のうちからできる。類設計室には、「やってみたい」という想いに本気で応えてくれる環境があるんです。

構造設計に求められるのは、構造計算だけじゃない。

構造設計とは、構造計算や図面を描くだけの仕事ではなく、その先にある人々の安心や、空間としての心地よさを支える仕事。そう実感したのは、入社半年で任された神戸市内の幼稚園のプロジェクトです。既存の建物は、兵庫県南部地震の後にプレハブで建てられたもので、30年近くそのまま運営されていた施設を、新しく建て直すというプロジェクトでした。計画された建物はL字型のプランで、地震の際には想定外の力が生じやすい構造です。どう耐震性能を担保するかが大きな課題でした。さらに、意匠や設備との整合性も一筋縄ではいきません。構造だけで考えてしまうと、開口部が制限され、園児たちにとって閉鎖的な空間にもできてしまう。構造性能を確保しながらも、空間としての開放感や機能性を損なわないよう、意匠・設備チームと何度もレビューを重ね、構造部材の配置や寸法を丁寧に調整していきました。
また、このプロジェクトで感じたのは、「説明する力」の大切さです。お客様が最も不安に感じていたのは、耐震性能でした。構造設計者として、構造の仕組みや安全性を数字だけで語るのではなく、それがなぜ必要なのか、どのような安心につながるのかを、丁寧に伝えることが求められました。「本当に安全な建物とは何か?」という問いに向き合いながら、構造的な工夫だけでなく、心から納得していただけるように対話を重ねた時間は、私にとって大きな学びでした。

一人では建てられないからこそ、対話を起点とした設計を。

入社間もない頃から、さまざまな成長機会をいただきましたが、初めからうまくいっていたわけではありません。むしろ最初のうちは失敗の連続でした。段取りが甘かったり、設計スケジュールの全体像を理解できていなかったり。それでも、困ったときには上司や先輩が話を聞いてくれ、必要があれば一緒に状況を整理しながら、どう動けばいいかをアドバイスしてくれました。若手のうちから挑戦できるのは、決して放任されているからではなく、必要なときに周囲に相談できる土壌があるから。信頼して任せてくれる上司や、すぐ隣で見守ってくれる先輩たちの存在が、挑戦する背中を押してくれるんです。
構造設計の仕事は、構造性能だけを追えば良いというものではありません。意匠や設備との整合性を踏まえたうえで、空間のデザイン性や施工性にも配慮された、すっきりとした構造計画を立てることが求められます。これは、類設計室ならではの強みでもあると感じています。以前、他の組織設計事務所との交流会で、各社の事例を発表し合う機会がありました。私は当時担当していたプロジェクトについて、設計当時の進め方や、意匠・設備との整合性はもちろん、それをどう構造計画に組み込んだかを中心に発表しました。すると他社の参加者からは、構造提案の面白さと、それが意匠・設備との整合性を高める中で出てきたという視点に、意外なほど反応が良かったんです。建築は一人では建てられません。関係者と連携し、ときには衝突もしながら、最適解を探し続ける。そのプロセスこそが、良い建築をつくる礎になるのだと思います。これからも、そうした対話を起点としながら、構造としての技術を追求していきたいと思っています。

Takuma Ishii

私が追求したいこと

大規模木造の可能性を、切り拓いていきたい。

将来的には、会社の注力分野でもある木造建築の追求を続けていきたいと考えています。学生時代から木構造を専門に学んできたこともあり、木という素材が持つ可能性には今も強く惹かれています。現場ごとの制約に応じた工夫や、新しい接合方法の検証など、挑戦の余地はまだまだあります。新たな技術開発にも関わりながら、今後の大規模木造のあり方を模索していきたいと思っています。

※所属、仕事内容は取材当時のものです。