類設計室の人材育成 ~構造認識と追求力で勝負する~

2018.3.2

こんにちは、東京設計室の岩井です。

今日は「建築設計者に求められる能力は何か?」という視点でお話をしたいと思います。

建築は「社会の器」と言われます。人々の様々な活動や意識を生み出し包摂する空間であり、自然環境・外圧に適応するための諸技術の総合であり、生産・経済・制度をはじめとする社会システムの具現化でもあるからです。

だから、建築設計に携わる者には、人々(意識・集団・社会)、自然、歴史、こうした広い対象の深い相互関係への認識=「構造認識」が不可欠。

それがあってこそ、専門技術や知識、経験も活かせるという関係です。

もちろん、こうした構造認識は、一朝一夕に身につくものではないし、学校の勉強と違って教科書もありません。日々の現実の中で追求し続けるしかないわけですが、会社経営としては、成員の「追求力→構造認識の力」をいかに上昇させるか、これは組織の盛衰を分ける、根底的に重要な視点だと思うのです。

(世間では、働き方改革と称して、労働時間の議論がさかんですが、組織・人材の力を強くするために改革すべきは、追求力が本丸だろうと思います)

こうした考えに基づいて、類設計室では、「追求の場」をどれだけ自在につくっていけるか、どれだけ高められるか、常にあちこちで実践、試行錯誤しています。

メンバーの声をいくつか紹介しましょう。

■社会人講師の体験を設計に活かす

私は設計業務だけでなく、週1回類塾で探求科の社会人講師を担っています。

探求科は、通常の5教科ではなく、”時代潮流、人々の意識構造”など、現実社会を対象とした追求で、“社会で求められる力”を子どもたちに掴んでもらいたいと思っています。

そして、未知なる課題にイキイキと向かう姿を見て、これこそ”本当の学びの場だ!”と手応えを感じます。

私自身は、探求科で感じた生々しい実感を生かして、新しい学びの場を構想、設計していきたいと強く思うようになりました。

建築(学校という器)をつくるだけでは不十分。構想から運用、実践段階まで統合してこそ、社会で求められる学びの場づくり、空間づくりができるはずです。

これからの設計者には、人々の生々しい意識や活動から、潜在的に求められるものは何かを捉える力、そして場を創造していく力が求められている。社会人講師をやってみて、ハッキリ気づくことができました。(大阪設計室 意匠房:今村)

■自然の摂理から環境を考える

現在、某公共建築の設計で、「森の中を歩くような、自然の微気候」をつくることに挑戦しています。機械にコントロールされる人工環境からは発想を変えた環境づくりです。

チームメンバーと、森の中で癒されるのはなぜ?森の生態系とは?樹木の生命の仕組みは?木々と光や風はどう影響し合っている?など、建築の枠を超えて議論を重ねていく中で、方向性が見えてきました。

こうした広い視野での議論を可能とし、事象間の関係性をとらえて提案を創り上げていくことのできる追求力の基盤は、ネットサロンや劇場会議という日常の場にあります。

そこでは、実現論や生物史、地球・気象史、近代科学の諸問題、フリーエネルギーなど、常識にとらわれない追求が展開されます。

建築とそれ以外などと区別をせず、それらを一体でとらえて環境や技術のありようを追求することが、新しい発想につながると思います。今は自然という未知なる課題と向き合う刺激的な日々を、とことん楽しみたいです。

■設計も組織活動も経営も一体で捉える

類設計室には「追求の場」がたくさんあります。設計案件の打合せ・チームミーティングはもちろん、月に1度開催される経営会議、社内外の幅広い世代と経済や社会情勢について追求、あるいは会社の広報戦略や人材募集に関する追求…すべてが学びと実践の場です。

ただし、こうした環境は「用意されているものではない」。

少なくとも、そう捉えているうちは力はつきません。自らがそのような場をつくる、自らが場を統合し活性化に導く、そうした「追求の場づくりの主体になる」気概こそが追求力を上昇させる鍵になると思います。

私自身は、設計課題だけに固執するのではなく、「あらゆる課題は一体」と捉えるようになってから、それぞれの場で得た認識を相互で活かすことができ、どんな課題も楽しめるようになったと感じています。(東京設計室 企画房:柴田)

◆類設計室の人材育成の取り組みはいろいろあります◆

「建築総体力」を獲得する『ローテーション配転』

『若手も組織を創る・変革する』自主管理共同体とは?

突き詰めて言えば、「建築総体を捉える力」も、「組織を創る・変革する力」も、「人々、自然、歴史を対象化する構造認識」も、一連一体の関係にあります。

これからもプロジェクトを通じて、日々の活動を通じて、「追求の場づくり」を盛り上げて、楽しんでいきたいと思います。