脱・つくりっぱなし ~使い方を共認し、みんなでコンセプトを貫く~
2020.10.19
突然ですが…竣工した建物って、
実は、ずっと同じ人が使い続けてくれるわけではないのです。
公立学校でいえば、毎年新しい子どもたちが入学し、卒業していくことはもちろん、校長先生も含めて教職員の方々の多くは数年単位で入れ替わります。
竣工して数年後、学校を訪れてみると「ここって開けられるんだ!?」「こういう風に使える場所だったのね!?」と誰も竣工当初の使い方を認識していない…ということも珍しくありません。
“つくりっぱなし”ではなく、生涯にわたり、使い方を共に認め合い、みんなでコンセプトを貫きたい。
そんな想いから、類設計室では「使い方調査」に取り組んでいます!
■実は、みんなコンセプトを知りたい
使い方調査では、現地調査やアンケート調査、さらには環境データ分析等により、竣工した建物が今、どういう使い方になっているかを分析していきます。
その中で、設計意図通り使われている部分、全く使われていない部分という現実、その原因が明らかになっていきます。
そうした分析結果は、報告会として、建物の管理者や利用者の方々と共有しながら、竣工当初のコンセプトや使い方までお伝えしています。
実は、この報告会は非常に喜んでいただけるのです。
「自分が勤務する前に設計され完成した建物が、どのような意図で設計されたか、直接聞けた貴重な時間だった」
「建築は器でしかなく、それだけでは学び・交流は生まれない。意図した活動に適した什器が必要だし、教職員や生徒が使う、使い方を工夫することが必要!
設計段階に掲げたコンセプトを、財務局や教育庁等の学校管理者、現場の教職員、みんなで貫くことが大事。そのためには、書面での共有だけでなく、対面での密なやりとりが必要で、使い方調査というカタチでの検証と継承は、大きな可能性。」
そしてコンセプトに共感すれば、ほとんどの方が、「自分たちでももっと工夫して使いたい!」と前向きになってくださいます。
「正直、使いにくい」と批判的だった部分に対してさえも、「これからの設計する学校に活かしてほしい」と言っていただけます。
設計者が歩み寄り、開きだせばみんな応えてくれる。報告会を開催するたびに、設計者が責任をもって、現場で管理・利用される方々へ継続的に「使い方」を伝え、議論し、これからの使い方を共に認め合っていくことへの期待をひしひしと感じています。
■現場には、目からウロコな認識があふれている
もちろん、設計者自身にとっても最大の学びの場であることは言うまでもありません。
建築設計は、クライアントとの対話、現場の方々へのヒアリングを行いながら進めますが、どれだけ追求を重ねても「こう使ってもらえるはず」という仮説の域を超えることはできないのです。
だからこそ、竣工して数年後の建物に、設計者自ら足を運び「実際どう使われているのか?」を調査すると、目からウロコが落ちるような認識が多く発掘できます。
*想像以上に素敵な飾りつけが施される階段展示スペース
*音楽祭も開催されるピロティ
*竣工以来開かずの可動間仕切り
*交流だけでなく授業でも利用されるラウンジ
*実はクラスを超えた交流・学び合いを生んでいた廊下
こうした実際に見たからこそ分かった、確信できた認識こそ、本当に使える「生きた認識」。
あらゆる常識が変わる今、「つくりっぱなし」を脱却し、現実を直視、クライアント・現場の管理・利用者のみなさまと「これから」の使い方を議論するなかで、新しい認識をつくりあげていきたいと思います!!
そんな志に共感できる、使い方調査をもっと知りたいというみなさん。お気軽にご相談ください。
https://www.rui.ne.jp/architecture/task/