建物が完成した後も足しげく通い、建物を共に育てる右脳発の設計へ

2021.7.26

連日の雨もおさまり、ようやく梅雨が明けました。

雨の多い時期は湿度も高くなり、ジメジメが不快に感じることも多いですよね。

実は、湿度を嫌うのは人間だけでなく、本のような紙類にとっても同じ。特に、本を多く収蔵する図書館は本の状態を良好に保つために温度や湿度に気を遣います。

類設計室が設計した荒川区尾久図書館でも、本にとって、人にとって気持ち良い環境になっているか、現地に赴いて確認してきました。

 

 

◇雨の日でもサラッと快適

本を保管するには湿度40~60%がちょうどいいと言われています。

梅雨時期には外の湿度は70%以上となる日も少なくありません。私が現地を訪れた日も湿度72%の雨上がりでした。(人の場合は、気温27℃湿度75%でほとんどの人が不快を感じるようです)

ところが、図書館の中に入ってみると、空間全体がほのかに涼しくて快適。本を眺めながら歩き回ると、冷えた空気が体の周りでサラサラと揺らいでさらに快適。

 

湿度計で測ってみると湿度50%!!本にとって最適な環境になっていました!!

 

梅雨の時期には、除湿モードで設備を運転してくれる図書館司書さんの運用も不可欠です。運営者とも協働しながら、快適な環境はつくられています

 

◇気持ち良い風が流れる読書空間

去年の秋ごろ、窓を開けた時の風通しについても実測しました。

本を読みながら柔らかい風を感じると気持ちいいですよね。けれども、風が強すぎると本のページがめくれてしまって逆に読みにくくなってしまうことも。単に窓を開ければいいということではないのです。

今回の実測では風速1m/sと、人の肌が感じられる程度の風の流れが測れました。風の入口と出口を適切な場所に設計することで、気持ち良い読書空間が実現されていました。

 

 

◇図面は数字や記号情報 ⇒ 現地で体感してこそ事実を掴める

設計する際にも、目標とする温湿度は設定します。

目標値を達成するために必要な設備を建物に搭載しますが、これはあくまで机上の計算で導いた答え。図面とは、まだまだ左脳的な情報の集積物にすぎません

工事の出来の良さ、使われ始めてからの運用者の意識などによって、思い描いていた性能が実現できるかどうか分かれてしまいます。

 

だからこそ、私たちは現地で確認することを大切にします。工事中はもちろん、図書館が開館する前の夏と冬に1回ずつ、使われ始めてから2回、現地に足を伸ばし実測調査を行いました。エアコンを動かした時の温度や湿度、窓を開けた時の風通し。運用者と会話して、設備を制御する方法や困りごとについても伺ってきました。

 

身体を使って感じる快適さは、次に設計する時の一つの目安になります。基準の数字だけに捕らわれず、右脳で捉えた情報を図面に落とし込んでいくことが設計者に期待される役割でもあります。

建物は使い始めてからが本番です。つくって終わりではありません。これからも足しげく通い、出来上がった図書館がより多くの人に喜んでもらえるよう、建物を共に育てていきます。