【新需要追求】個人発ではなく集団発で、これからの社会づくりを追求する
2021.6.2
最近クライアントから、「コロナで使われなくなったオフィスの有効活用を考えたい」「ガラガラに空いている文化ホールに人を戻したい」等の声を頂いています。
コロナによって、「集まる」という本能的な活動が禁止されて、建築というハードの在り方も大きな変化を求められています。
一見すると、コロナ対策(3密対策)を考えればよいと思いがちですが、それでは社会の期待には応えられません。問題の本質はもっと深いところにあるからです。
そもそも、日本では働く人の活力が6%と世界最低水準にあります。また、文化ホール・映画館などの娯楽(消費)活動は、コロナ以前から客足が遠のいていました。
つまり、コロナはきっかけにすぎません。これまで後回ししてきた社会課題・組織課題が、コロナによって急速に顕在化しただけなのです。
以前のブログで、建築市場は今後15%縮小していくと予測しましたが、市場拡大=箱ものをつくる時代はいよいよ終わりです。人々が本当に求めているものを提示しなければ、これからの時代では勝っていけません。
本日は、現在進行形で追求している「これからの社会の新需要」について、ご紹介します!
■「市場社会」から「脱市場社会」へ
2020年は、必要か否かを問う年となりました。テレワークで、満員電車に揺られる必要もなくなりました。利益拡大のためにあくせく働くのではなく、心の豊かさ、もっといきいきと暮らしたい。そんな動きが、企業を中心にはじまっています。
- 人材派遣業のパソナは、本社ビルを東京から淡路島に移転し、社員が家族ともども移住し、職住一体の暮らしをはじめました。市場拡大のためには、都市で生産した方が効率的です。それよりも生産と暮らしが一体の生き方を選択したのです。同時に、地方の様々な社会課題を、地方に住んで解決するという新産業創造を模索しています。
- 料理レシピサイトのクックパッドも、本社を東京から横浜へと移転しました。理由は、街に開かれた生産コミュニティをつくるため。食文化のこだわりが強い横浜で、たくさんの生活者と価値観を共有しながら、食を中心としたコミュニティづくりにチャレンジするためです。
- 長野県の軽井沢風越学園は、幼小中の異年齢の子どもたちが混在しながら学ぶ学校として注目されています。画一的なカリキュラムのない、寺子屋のような学び場です。しかも大自然中で遊びながら暮らします。コロナ以前から設立準備されていましたが、コロナ後は、移住してでも通いたいと注目を浴びています。
これまで市場拡大・利益拡大のために都市に集中していた人たちが、そこに疑問を感じ、本当にやるべきこと・やりたいことを求めて、動き始めています。
■「個人」発ではなく、「集団」発で追求する
以上のような、「脱市場社会」の流れに可能性を感じつつ、そこに危うさも感じています。
それは、これらの社会潮流の根底には、個人中心の価値観が前提にあるからです。「大企業を中心とした序列社会、画一的な仕事・教育はダメ。多様性が大事。だから、個人発の社会を作ろう」という価値観は大きな矛盾があります。市場拡大(環境破壊)は、集団を解体され、バラバラな個人になる中で、成長したからです。
だからこそ、設計部では、個人発ではなく、「集団」発で新たな社会づくりを追求しています。
その切り口が、
「生産も暮らしも学びも一体」+「自分たちでつくる」 社会です。
市場拡大によって、生産(企業)も暮らし(住宅)も学び(学校)も分断されてきました。それをつなぎ、新しい共同体をつくりだしていくこと。そこでは、消費者ではなく、当事者(自分たちでつくる)こそ主役になる社会です。
以上の視点をもって、現在は、生産・学び・地域の切り口をもとに各方面で追求中です。
新需要の追求の視点
❶職住一体による企業の共同体化 ⇒職住一体+新産業を創造する企業の拠点再編
❷遊び・仕事・探究が一体となった学びの場⇒企業立学校の可能性
➌都市と農村をつなぐ ⇒食のサプライチェーンを核としたまちづくり、全寮制の農学校
追求は始まったばかりですが、設計の枠を超えて新たな社会づくりを加速させていきます!