東京設計室
営業課長 兼 企画課長
中谷 泰基Taiki Nakatani
2010年入社
設計の枠を超え、事業の戦略パートナーとしてクライアントに徹底的に寄り添う類設計室。設計事務所らしくない設計事務所だと言われることもよくあります。そんな当社ならではの魅力について、設計事業部のメンバー4人に語ってもらいました。
クライアントから、「設計事務所らしくない設計事務所」と言われる背景や理由は?
中谷:
お客様の置かれている状況に深く寄り添う姿勢だと思います。建築設計はもちろんだけど、その前段階の構想から設計領域を超えた仕組みづくりまで、お客様の事業戦略やビジョンの実現にもパートナーとして伴走していく。そうした姿勢はお客様からもお墨付きをもらうことが多いですね。
佐保井:
設計事務所でありつつ、農園や教育といった事業の主体者でもあるからこそ、現場のよりリアルな部分も理解して設計に臨めますよね。一歩も二歩も踏み込んだ提案を一緒に考えられるという点でも、お客様から信頼していただけることも多々あります。
中谷:
事業与件とか設計与件が固まってから設計に向かうのではなく、類設計室は与件からお客様と一緒につくる意識だよね。だからアウトプットも全然変わってくるように思います。
朝日:
設計のなかでつながったお客さんと、農園事業部や教育事業部とだったらどういう展開ができるかなって思考できるのも、類設計室ならではだと思います。建築設計に携わりながらも、設計の枠にとどまらないことを、一人ひとりが思考できている。設計事務所っぽくない発想が生まれる土壌があると思います。
坂部:
設計だけやっていると、組織をつくるような経験はほとんどないと思いますけど、類設計室の場合は「自分の働く場を自分でつくる」ことをみんなが実践していますよね。例えば私の場合は、東京事務所のPCなど、デジタルデバイスの管理も業務として行なっています。そういった活動や経験から自然と組織をつくる側の目線が養われていく感覚があります。
朝日:
広報業務や採用業務も、設計メンバーが兼任でやっているよね。某IT企業では『20%ルール』を設けて、勤務時間の20%は自分の担当業務とは異なる業務に充てることを推奨しているけれど、実際にその制度を利用した社員から生まれたアイデアが新しいサービスや事業につながっていたりする。そうしたイノベーションは柔軟な思考から生まれると思うし、類設計室でも設計以外の活動があることによって、提案の可能性が広がっていると思います。
類設計室では「同化」という言葉がよく使われますが、その意味は?
中谷:
人によって見解が分かれるかもしれませんが、同化とはお客様と一体化していくこと。まずはその企業の歴史を遡って年表をつくるところから始めます。例えば、「この年に創業の地から移転した」とか、「この年に新たな事業を展開した」といった、企業や自治体における戦略が年表をつくることで浮き彫りになってくる。その組織がどんな社会を実現したいのかという意志が見えてくる。私たちが同化するのは、お客様と一緒に未来をつくるため、事業戦略のパートナーとして向き合うためだと思います。
朝日:
私が担当していた小学校の案件では、プロポーザルの段階から学区内を歩き回ったり、現地の図書館で地域や教育の歴史を調べたり、地域の方への聞き込み調査を行ったりして。先生の働く環境や子どもたちの学ぶ環境がどんなものなのか、様々な情報を自分の足で稼いで同化を深めていきました。いざプロジェクトがスタートした後も、地域の祭りやイベントに全部足を運んで、校長先生からは「設計事務所さんって、こういうところまで全部来るんですね。イメージと違いました」って言われたこともあります(笑)。同化って相手がどこに期待を持っているのかを探る作業でもあると思います。具体的な建築に落とし込むときにも、お客様も知らない空間のヒントがその土地に落ちている。ちゃんと自分の足で情報を稼ぐのは大事だなと思います。
中谷:
確かに、朝日は足で稼ぐタイプだよね。現地に行くのは、当然みんなやるけど、朝日は特にフットワークが軽い。しかも朝日は大ファンになるでしょ?お客様の。
朝日:
そう、大ファンになる。お客様のことを知るうちに、もっと役に立ちたいと思うし、お客様に勝ってほしいんですよね。もう私生活から全てお客様の商品で固めちゃったりして(笑)。
中谷:
そういうことも意外と大事で、例えば食品メーカーだったら、その商品のラインナップを知れば、この企業は食品を通してどんな暮らしを実現したいのか、事業の戦略だったり想いが見えてくるよね。若手の意見も聞いてみたいけど、坂部はどうかな?
坂部:
クライアントの他にも、自然のものや素材に対する同化のカタチもあると思います。最近担当したプロジェクトで、内装の木材に広葉樹を使いたいということになったんですが、建築ではほとんどの木材が針葉樹で、広葉樹は建材に向いていないとされています。広葉樹は人の手を加えながらメンテナンスをしていかないと建材にできないという難しさがある。でも、日本の里山の原型は広葉樹林。昔ながらの風景を再興したいと考えたときに、なんとか広葉樹を建材に使えないかという試みをすることになったんです。実際に森まで行って、現場の方の声を聞いたり、木材製造の流れを見て、建築にどう落としていこうかと考えながら設計をしました。生きたものをどう建築に活かすか、それは自然の摂理を理解しないとできないことだと思いました。
「活力のある社会をつくる」を
理念とする類設計室にとって、建築の在り方とは?
中谷:
建築は活動というか、行為そのものを指すと思う。つくっている過程における熱量みたいなものが、出来上がる空間にもちゃんと反映される。そういった熱量ある過程の結果、お客様があたかも自分が設計したかのようにその空間のことを話してくれたり、あるいはそれを聞いた人が「あの空間ってこんな想いでつくったみたいだよ」って広めてくれたり。そんな風に、みんながその空間を好きになっていくような建築になっていくといいなと思います。
佐保井:
私も、その過程と結果まで含めて、活力ある建築として捉えています。以前に担当した私立の小学校のプロジェクトでは、どんな建物にするかを考える前に、子どもたちにどんな学びを提供するか、というところから学校の先生たちと一緒に考えました。全教職員を巻き込んで何度もワークショップを開催し、教育方針や教育理念を類設計室も一緒になってつくったんです。その中で、先生方も子どもたちの「活力」を生み出したいっておっしゃっていて。建築だけではなく、その中で行われる活動、そこで過ごす人の活力を常に考えているのが類設計室だと思います。
坂部:
建築の在り方とは?と問われたときに、「人」って言葉が最初に出てくるのが類設計室らしさで、私たちの目指す「活力のある建築」とつながっているのかなと思います。あと、これは私が意識していることですけど、活力あるものを生み出そうとするときに、まず自分自身が活力を持っていないとダメだと思うんです。類設計室の社員はいつも楽しそうにやっていて、暗い顔をしている人がいない。ほとんど自席にいない人もいて(笑)。いろんなところで、いろんな人と会話しながら仕事している。デスクにずっと向きがちな設計のやり方とは違って、そこにも活力を感じられます。
類設計室ならではの魅力や強みはなんだと思いますか?
朝日:
設計事業部は意匠、構造、設備に分かれているけど、それぞれの距離がとても近いと思います。部門が違う、フロアが違う、となればそれだけでコミュニケーション量が少なくなるけれど、類設計室は全部門がワンフロアにいて、物理的な距離も近い。さらには、各部門をジョブローテーションで回るのも設計事務所では珍しい取り組みですよね。
中谷:
もちろん能力とか適性を見て判断するけれど、ローテーションをすることで今の専門領域を違う視点で深めてもらう狙いもあるし、総合的な建築能力を育てていこうとしているよね。建築設計という仕事自体がチームで行うものだから、それぞれの技術領域の人たちが、どんな意識で、どのような進め方をしたいのか、理解すればするほどプロジェクトを高度化できる。阿吽の呼吸みたいなものからプロジェクトに一体感が生まれたり、坂部が言ってくれたように個々の活力も湧いてくる。そんな感覚を持てるようになるのが、類設計室の強みなのかなと思います。
坂部:
全員で一体となって追求できる土壌があるところが、類設計室ならではだと思います。インターンシップに参加した時から感じていたことですが、年次に関わらず、本当に若手からベテランまで、みんな同じ熱量で課題を追求していました。月並みな言葉で言えば風通しが良くてフラットな組織ということかもしれないけれど、この一体感は他ではなかなか味わえないです。
直近の課題やこれから追求していきたいことは?
佐保井:
先ほどの話にもありましたが、より高度な建築をつくるためには、その過程も高度化していく必要があると思います。今、私がリーダーとして取り組んでいるのが、類設計室がお客様に提案している「共創スタジオ」。類設計室では以前から「共創スタジオ」というお客様と一体となって議論する場を仕掛けてきました。ただ、世の中でも設計にワークショップを組み込む事例が多くなってきていますよね。じゃあ、その中で類設計室の「共創スタジオ」は他とどう違うのか、どんな価値を提供できるのか。「共創スタジオ」の追求のさきに、お客様と一体で追求していく設計プロセスを生み出したいと思っています。
中谷:
私個人としては、営業部と企画部を兼任するようになって、次代の組織を牽引していくことを期待されていると感じています。より本質を追求する力を身につけて、目の前のクライアントへの同化力を高めると同時に、社会変化や外圧などから事業構想を練り上げる提案力に磨きをかけていきたいと思っています。
朝日:
私は建築プロジェクトを統括する責任者になったばかりなので、まずはひとつ、統括責任者として建築を完成させることが直近の目標ですね。どんなプロジェクトであれ、必ず未知な課題を追求していきたい。プロジェクトごとに挑戦するテーマを明確に設定して、新しいことに挑戦し、それらの追求をクライアントの充足につなげられたらと思っています。
坂部:
設計は答えのない仕事だと思います。だからこそ追求を絶やさない姿勢が大切で、答えらしきものを探す過程を通して、新しいものをつくり続けていく。その大変さも含めてこの仕事の醍醐味。見た人の心を動かすような建築を提案できる設計者になりたいですね。
※所属、仕事内容は取材当時のものです。